魂の漂泊者ヘルダリーンと、生の探求者ヘーゲル。その二人がめざした学問の自由と自由の思想とは。
本書の直接の引き金になったのは、授業を盗聴するという卑劣な行為がキリスト教を標榜する大学で平然と行われていた事実である(明治学院大学授業盗聴事件)。この事実に接したときに浮上したのは、およそ二百年前にヘルダリーンとヘーゲルがともに獲得しようとしていた「学問の自由」と「自由の思想」である。ドイツの大学にある神学校で哲学と神学を学んでいた二人は、監視されたり盗聴されたりしながらも、フランス革命に触発されて自由の精神に目覚め、キリスト教に反発しながら、のちに偉大な詩人となり哲学者となっていく。(本書「まえがき」)
目 次
第一章 ヘルダリーンと自由──魂の漂泊者 小磯仁
第一節 出生と家族──詩人への不退転の決意
第二節 少年の詩作試行と夢──「マウルブロン清書稿」の成立
第三節 シュティフトを終えるも──詩人独立の道に
第四節 『ヒュペーリオン』──「生あるものの抹殺の不可能」
第五節 後期讃歌の一例──二つの授業あるいは「小さな時間」
第二章 ヘーゲルと自由──生の探求者 寄川条路
第一節 青年時代の理想──自由の哲学者への決意
第二節 宗教への欲求──『キリスト教の精神』
第三節 政教一致から政教分離へ──生の弁証法の成立
第四節 政治への欲求──『ドイツ国家体制の批判』
第五節 哲学への欲求──学問の体系から人間の生へ
著者紹介
小磯 仁 こいそ・まさし
1938年生。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院修士課程修了。ドイツ研究振興協会(DFG)共同研究員、ヴュルツブルク大学専任講師、山梨大学教授を歴任。現在、山梨大学名誉教授・詩人。専門はドイツ文学。著書に『ヘルダリーン』清水書院、『リルケ』共著、清水書院、『ヘルダリーン 愛の肖像』岩波書店、など。『近代ドイツ抒情詩の展開』共著、同学社、訳書 ベーダ・アレマン『ヘルダリーンとハイデガー』国文社、ベーダ・アレマン『ヘルダリーン 詩的なる精神』国文社、など。詩集に『海の太鼓』みやび出版。
寄川条路 よりかわ・じょうじ
1961年生。早稲田大学文学部卒業、ボーフム大学大学院博士課程修了、哲学博士。愛知大学教授、明治学院大学教授などを歴任。専門は思想文化論。日本倫理学会和辻賞、日本随筆家協会賞などを受賞。著書『哲学の本棚』『教養としての思想文化』以上晃洋書房など。編著『学問の自由と自由の危機』『実録・明治学院大学〈授業盗聴〉事件』『表現の自由と学問の自由』以上社会評論社、『大学の自治と学問の自由』晃洋書房、『大学の危機と学問の自由』『大学における〈学問・教育・表現の自由〉を問う』以上法律文化社、など。
2022年12月5日刊
ヘルダリーンとヘーゲル 学問の自由と自由の思想(ブックレット「学問の自由」シリーズ)
小磯仁、寄川条路 /著
定価=本体900円+税 ISBN978-4-7845-1598-1 A5判ブックレット90頁
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