19世紀ドイツのヴァイオレンス(民衆の革命的暴力)行使者による「人類―あるがままの姿とあるべき姿」の全訳。ヴァイトリング思想を端緒に現代的諸問題を考えあわせる試み。
19世紀ドイツの革命家ヴァイトリングは、19世紀前半ヨーロッパの労働運動史で一世を風靡した人物であるが、マルクス(主義者)によって史上から抹殺されて以後、20世紀を通じてなかなか再評価されることなく今日に至っている。理由を探すことはたやすい。彼は古今東西の社会的活動家の一群に連綿と継承されてきたアウトローの一人だからである。
ヴァイトリング思想は原初性(societas)を秘めている。マルクスのような文明論(civitas)の基準をもってヴァイトリング思想を推し量ろうとしても埒はあかない。『人類』は、まさにその原初性の探究に必要な一級の参考資料である。その後に刊行される彼の著作群は、おおむね『人類』のバリエーションなのである。価値転倒の思索者ヴァイトリングのエッセンスはこの一書に収められている。
19世紀ヨーロッパにおいて現実有効的だった民衆の反抗は、21世紀のこんにち徹底的に抑え込まれている。民衆の革命的暴力(ヴァイオレンス)と統治者の国家的暴力(フォース)の間に質的区別はあるのか。ヴァイトリング思想を端緒にして、そのような現代的諸問題をもあわせて考えてみたい。
(はしがきより抜粋)
<目次>
第1部 ヴァイトリング著「人類―あるがままの姿とあるべき姿―」(翻訳)
収穫の機は熟している/自己の義なる本分/人類大家族同盟の憲章/同盟の普通労働に対応する産業軍/評議員会(Senat) と本省/一般規定/交易時間(Die Commerzstunden)/発明の特典、または職長会議/裁判職と更生施設/財産共同体の物質的利益/叛逆と隣人愛の旗幟を!
訳者解説
第2部 〈革命か啓蒙か?〉 ロンドン労働者教育協会における連続討論から 1845.2.18 〜46.1.14(翻訳)
「ロンドン連続討論」解説
第3部 フォースとヴァイオレンス(論考)
第1章 ビュヒナーの檄文『ヘッセンの急使』
第2章 手工業職人ヴァイトリングの〔社会的デモクラシー〕
第3章 フォースとヴァイオレンス―〔支配の暴力〕と〔解放の抗力〕
第4章 国家の戦争・民間の戦争・技術の戦争―ロシアのウクライナ侵攻によせて
翻訳・編著者 石塚正英 いしづか・まさひで 東京電機大学名誉教授。NPO法人頸城野郷土資料室(新潟県知事認証)理事長。著作『革命職人ヴァイトリング―コミューンからアソシエーションへ』『バロック的叛逆の社会思想』『歴史知のアネクドータ』ほか多数
2023年8月1日発売
ヴァイトリング著「人類」 革命か啓蒙か
石塚正英 翻訳・編著
定価=本体2200円+税 ISBN978-4-7845-1899-9 四六判ハードカバー208頁
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