日本の朝鮮植民地支配は36年間にわたっていたが、最後の1年間の朝鮮総督は阿部信行だった。最後の1 年間は朝鮮人にとり、最も大きな犠牲を強いられた時であった。
この1年間の朝鮮農政の実態と戦時下の朝鮮農民の生活を公文書の記録と新聞報道を中心に検証する。極めて少ないこの時期の戦後の研究に光をあてる。
<目次>
はじめに
第1編 植民地末期1年間の朝鮮農政
第1章 阿部信行の天皇への上奏文と農政転換─
第1節 阿部総督の農政転換
第2節 緊急食糧増産対策要綱―内地第一主義──
第3節 1945年植民地支配最後の米穀供出対策要綱―全農民の64%が収穫全量供出──
第4節 3年連続の凶作記録── 1944 年度を中心に──
第5節 凶作下の農民生活
第6節 戦時末の農政破綻
第7節 米の供出と農民の抵抗
第2章 朝鮮人対応の変更方針
第1節 朝鮮人・台湾人に対する処遇改善発表
第2節 政策転換のゆくえ
第3章 阿部総督の上奏文
第1節 1945年4月の上奏文
第2節 阿部第2の上奏文と総督府の終焉
第3節 1945年9月9日の降伏文書
第4章 日本本省の100 万人労働動員要求
第1節 上奏文と強制動員
第2節 朝鮮内の戦時労働動員
第3節 日本国内への労働動員
第5章 上奏文と徴兵
第1節 第1次徴兵と臨時徴兵
第2節 朝鮮在勤勤務隊一覧
第6章 戦時交通・運輸の実態
第1節 日本と朝鮮の海上交通
第2節 釜山港の状況
第3節 天皇上奏直前の釜山港
第4節 木材の海上輸送
第5節 朝鮮の鉄道交通と関釜連絡
第6節 戦時末の交通事情
第2編 植民地における日本人と朝鮮人の乖離
第1章 植民地末期の朝鮮社会と日本社会の乖離
第1節 朝鮮人の暮らし・伝統と植民地支配
第2節 朝鮮人労働現場での乖離行動
第3節 朝鮮人民衆の寄付と預金に対する対応
第4節 供出代金まで全額貯蓄強制
第2章 朝鮮解放前1年の日本人と朝鮮人の乖離
第1節 神社参拝
第2節 貯蓄の強要
第3節 朝鮮人全ての所得に天引き預金化
第4節 新興所得層への預金の期待
第5節 行政組織と朝鮮人民衆の乖離
第6節 朝鮮人女性の労働者としての動員
第7節 朝鮮人満洲開拓団と「大陸」の花嫁
第8節 戦時末期に採用された水稲畦立栽培法
第9節 日本語の強制
第3章 新興所得層の出現
第1節 阿部総督下のインフレ進行対策
第2節 新興所得者とは
第3節 強制動員労働者送金者からの送金天引き強制預金
第4節 農民からの天引き預金
第4章 戦時下朝鮮農民の離村
第1節 朝鮮農民の離村
第2節 東拓京城支店の離農小作人全般状況
第3節 東拓京城支店管内農場の農民離村状況
第4節 郡一般農民離村状況
阿部信行朝鮮総督下の朝鮮関係年表
あとがき
<著者紹介> 樋口雄一(ひぐち・ゆういち)1940年生まれ。元・高麗博物館館長 中央大学政策文化総合研究所客員研究員。 著書:『戦時下朝鮮の農民生活誌』『金天海―在日朝鮮人社会運動家の生涯』『植民地支配下の朝鮮農民』『増補改訂版 協和会―戦時下朝鮮人統制組織の研究』(社会評論社)、『日本の朝鮮・韓国人』『日本の植民地支配と朝鮮農民』(同成社)、『戦時下朝鮮民衆と徴兵』(総和社)ほか。共著:『朝鮮人戦時労働動員』『東アジア近現代通史5』(岩波書店)、『東アジアの知識人4』(有志舎)、『「韓国併合」100 年と日本の歴史学』(青木書店)ほか。 資料集:『協和会関係資料集1 〜 5』『戦時下朝鮮民衆の生活1 〜 4』『戦時下朝鮮人労務動員基礎資料集1 〜 5』(緑蔭書房)ほか。
2024年3月5日刊
戦時末朝鮮の農政転換
最後の朝鮮総督・阿部信行と上奏文
樋口雄一/著
定価=本体2600円+税 ISBN978-4-7845-1218-8 A5判上製176頁
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