たった17音(スペック!?)の中に、実はたくさんの「キオク」が刻み込まれている・・・! これが本書で追いかけるテーマです。
17音に込められた思いとともに、その場でしか見られない景色を俳諧師たちは言葉だけで残したのです。すでに失われて久しい景色、習俗、自然。数百年前の出来事。特に、画家でもあった与謝野蕪村は、言葉でも風景を描いた・・・!
今ならTwitterやインスタグラムで表現する感覚とどこか通じる・・・という思いを込めて。誰かの歌を意識して歌う楽しみ。芭蕉の作った歌を意識して誰かが詠む。同時代に限らず、数百年をこえた現代にも通用します。時代を飛び越えた「応答」とも呼べるもの。本書では、芭蕉や蕪村が作った歌をそうした視点でも紐解きます。2人には近江(のちの滋賀県)で詠んだ歌が数多く残されています。
それらに注目した著者・篠原さんは、現在の勤務地、滋賀県の地から、芭蕉と蕪村の歌をはじめ門下の歌、現代の歌を手がかりに、京と鄙(ひな)の歴史に踏み込んで行きます。
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冒頭の「はじめに」をお読みいただけます。 第1回 歴史をしまい入れるもの 第2回 眼前のことどもを1行にこめて 第3回 キオクのヒキダシをつくる
目 次
はじめに
第一章 新・都鄙問答 ─ 近江の文化的景観─はじめに
1 芭蕉の近江、蕪村の京
2 文化的景観と俳諧・俳句
*「水の自然」としての琵琶湖 ─ 大景 ─
*「生命の水」としての琵琶湖 ─ 中景 ─
*「農の水」としての琵琶湖 ─ 中景 ─
*「漁の水」としての琵琶湖 ─ 中景 ─
*「工の水」と琵琶湖 ─ 中景 ─
*「生活の水」と琵琶湖 ─ 小景 ─
おわりに
第二章 俳諧・俳句と民俗学 ─原郷論へのアプローチ─
はじめに
1 俗事・俗情と俳諧の関係性
2 俳諧・俳句の応答可能性とは
3 文化的景観と俳諧の応答可能性
4 琵琶湖と俳諧・俳句 ─魚類を中心に─
第三章 蕎麦と河豚
第四章 ノラを歩き花を愛でる蕪村
はじめに
1 蕪村の植物句の概要
2 俳諧と山野草・人里植物
3 蕪村、ムラのなかを通りぬける
4 ノラを歩く蕪村、花を詠む
おわりに
第五章 ふなずし考
1◆近現代のふなずし
1 ふなずしの旬
2 現在のふなずし
3 ふなずしの多様性─ 地域性と階層性─
4 ふなずしの粗野と洗練
2◆俳諧・俳句とふなずし
はじめに
1 歴史資料・博物誌資料としての俳諧・俳句
2 俳諧・俳句で綴る鮒の生態とふなずし
3 ふなずしの旬をめぐる問題
おわりに
あとがき
人名索引
定価=本体1,800円+税 ISBN978-4-7845-1736-7 装丁・中原達治
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著者紹介
篠原徹(しのはら とおる)1945年中国長春市生まれ。民俗学者。京都大学理学部植物学科、同大学文学部史学科卒業。専攻は民俗学、生態人類学。国立歴史民俗博物館教授を経て、滋賀県立琵琶湖博物館館長を勤める。従来の民俗学にはなかった漁や農に生きる人々の「技能」や自然に対する知識の総体である「自然知」に目を向ける(「人と自然の関係をめぐる民俗学的研究」)。著書に『自然と民俗 ─心意のなかの動植物』(日本エディタースクール出版部、1990年)『海と山の民俗自然誌』(吉川弘文館、1995年)『アフリカでケチを考えた ─エチオピア・コンソの人びとと暮らし』(筑摩書房、1998年)『自然とつきあう』(小峰書店、2002年)『自然を生きる技術 ─暮らしの民俗自然誌』(吉川弘文館、2005年)『自然を詠む ─俳句と民俗自然誌』(飯塚書店、2010年)『酒薫旅情』(社会評論社、2014年)など。