各地で催された「酒宴」を手がかりに日本人の芳醇な歴史を探ろう・・・! 江戸から近代に入って現代まで時代を網羅する実験企画『酒運び 情報と文化を結ぶ交流の酒』。
本書は2013年9月刊。すでに4年が立ちますが、そこはお酒の不思議さか、味わい(寄稿の内容)に深みすら感じられる・・・。運ぶ → 人から人に伝わる。お酒が運ばれて見えてくるのは、日本で暮らす私たち庶民が担う文化の豊かさ、面白さ! 1冊で何度も美味しい実験企画です。
◆大串尚代氏書評「酒が織りなす物語」2013年10月03日が紀伊國屋書店ウェブサイトで公開中です。ぜひご覧下さい!
http://booklog.kinokuniya.co.jp/ogushi/archives/2013/10/post_10.html
酒 運 び 情報と文化をむすぶ交流の酒
ほろよいブックス編集部 編
執筆:斎藤弘美/篠原 徹/加藤幸治/上野明子/宮沢 聡/迫内祐司/巻島 隆/相馬高道/野添憲治/真板昭夫/川端正吾/瀬間 剛/内野豊大
装画・亀澤裕也 装釘・臼井新太郎
A5判変型・280頁・定価=1,900円+税
口上
When in Rome, do as the Romans do. ──郷に入りては郷に従え。大切な処世術でございます。
Barの棚に並ぶお酒。バーテンダーが選び抜いたお店の顔。威風堂々。私ども客はちょこんと腰掛けまして、あとは郷に入りてはの態でマスターにお任せ。お薦めを待ちましょう。
集いましたるお酒の面々は世界各地で造られてきた逸品だ。
名付けやデザインを工夫した瓶やら缶に収まりまして、いざ物流の旅へ出発。なんやかんやでお馴染みのBarにもご到着。客はもうすぐそこだァ。
──酒類にあわせてグラスが選ばれ、注がれる。緊張と解放の入り交じる瞬間、仕上げの1滴が落ち、バーテンダーから客へリリース。よっ、待ってましたァ! これぞ手塩にかけた〝酒運び〟。さぁさぁさぁ、あとは私どもの口にゆっくり運んで参ります。
いただきます。んん、美味い。も一度運ぶ。おぅ美味い。おかわりなんかしちゃいましょ。
マスターもう1杯! ……でも、そうだ。〆は財布からお金をお店に運ばなくっちゃあいけないわけで。
さて、改めましてのご挨拶。古今東西お酒がつなぐ良縁奇縁。本書はさしずめき窓。皆々様のオココロをお酒の御縁で染めます、ほろよいブックス〝酒運び〟。開演でございます。
収録作品
斎藤弘美
酒が結ぶ縁、広げる世間 ─岩内・高田そして水上勉─
北海道岩内町の木田金次郎美術館や「もんてん瞽女プロジェクト」秘話を紹介しながら人との縁を考えます。
篠原徹
酒食同源の不思議な世界 ─エチオピア南部コンソ社会での調査より─
山の上のほろよいの国・・・!? かなりアルコール度数の高い調査記録ですので要注意。
井上逸兵
酒の力と「飲み会力」
社会言語学の立場から日本の飲酒マナーをユーモアとペーソスをまじえて分析。
加藤幸治
酒がつなぐ「望郷」の共同体
紀州鍛冶の民俗調査を「「望郷」の共同体」というキーワードで紹介。地域社会での酒宴の役割について考えます。
上野明子
大阪からお酒の情報を発信 ─『ほろよい手帖 月刊たる』─
飲酒文化/酒類業界の最前線を伝えるメディアの魅力を伝える好エッセー。
宮沢聡
新宿の酒場と文人 ─酒場「樽平」を贔屓にした文人たち─
新宿に集った文人・画家たちを酒場を中継して紹介。紀伊國屋書店を開業した田辺茂一のために書かれた寄せ書き屏風も必見。
迫内祐司
小杉放菴にとっての酒と友 ─人似花酒如泉─
「酒は憂ひを掃ふといへども/大いなる憂ひ大いなる悲しみは/酒の及ぶところに非ず/慎んで憂ひ/静に悲しむにしかず」画家の人生をたどる一篇
巻島隆
千住酒合戦の舞台「中六」とは? ─広がる飛脚ネットワーク─
江戸時代に情報伝達を担った飛脚が実は文化交流にも貢献していた側面に光を当てた論考。千住の酒合戦が舞台。
相馬高道
酒はうまいか、ねえちゃんはきれいか ─酔っぱらい天国・秋田の虚実─
清酒の消費量で群を抜く秋田県の酒文化に迫る一篇。つくられた「秋田美人」とは一体・・・!?
野添憲治
猫の沢事件 ─密造酒取締の虚像と現実─
裁判記録をもとに官と民の葛藤を柔らかくも鋭い筆致で描く長編。(たいまつ新書『どぶろくと抵抗』より再録)
真板昭夫
エコツーリズムの宝探しとおいしいお酒の効用
日本版ラム酒「グレイスラム」のエピソードのほか、お酒の文化を観光の視点で分析する論考。リアルな宝探し、エコツーリズムの世界。
川端正吾
酒粕料理のほろよい ─玩具の旅・取材ノートより─
酒粕を使った郷土料理と、その土地土地の空気を醸す郷土玩具の魅力を伝える好エッセイ。
コラム
酒運びロマンティクス … 瀬間 剛
白河の酒 … 内野豊大
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