井上良一著『「日本語人」のまなざし 未踏の時代の経済・社会を観る』をご案内します。
日本語を母国語とする「日本語人」の視点から、現代日本の閉塞状況を打開して行くために自ら姿を省みて、新たな力を呼び起こすための考察。
井上良一著
「日本語人」のまなざし
未踏の時代の経済・社会を観る
2018年1月15日刊 A5判並製・本文2段組 237頁
定価=2,200円+税 ISBN978-4-7845-1563-9
「日本語人」:角田忠信博士が最新著書のタイトル(「日本語人の脳」)に使われているもので、“日本語を母国語とする人びと”を指します。
著者から読者へ
日本語を廃止し、外国のことばを国語として採用しようという考え方を、明治の初めの時期に主張された方々がいるのをご存知でしょうか。これは実現しませんでしたが、こうした考えは潜在的にずっとあったようで、戦後においても、国語を別の言語にという動きがあり、また、ローマ字表記の日本語を、というような動きもありました。
最近は、こうした考えは薄れてきたようにも思いますが、現在は新たに、企業活動の中で英語を基本言語として扱おうとする動きや、国の政策の中で公用語を英語にする特区を作ろうというような考え方も出てきています。日本語は、明治以降今に至るまで、国際的な活動を進める上であまり好ましい言語ではないと思われてきたようです。
この本で展開しようと考えておりますのは、そうした考えとは真逆で、日本語は国際的に見ても大変すばらしい機能を持った言語であり、何よりも、この言葉が日本人そのものを産み出しているのだという主張です。日本を現在に導いたものは、日本語であると言っても良いと考えています。
そして、日本語をやめたら、日本人はいなくなるとさえ思うようになっています。全体をまとめてみて、改めてこの意を強くいたしました。なぜそのように思うのか、ぜひ全体にお目通しをいただき、私たちが使っていることばに内在する計り知れない役割について、振り返っていただけたらと思います。
(本書「はじめに」より)
目 次
はじめに
序章
閉鎖社会を招く言語としての日本語 「なじみ」の構造 書きことばと話しことば 日本語に発する特質を大いに世界の中で活用すべし
第1部 日本語の特質について
第1章 日本社会の変容を導いた日本語の特性
⑴ 日本語は、話そうとする相手の立場に立ってモノ言う言語 ⑵ 日本語にはこれだけの特性がある A 「自発性」がなければ日本語会話は成立しない/B ボトムアップ/C ウチ・ソト社会の課題 社会意識 付和雷同/D 「忖度」は日本語の構造から生まれている/E なじみ/F 海外から見ると受身とみられる ⑶ 日本語評価の高まり
第2章 欧米的な発想との齟齬
⑴ コミュニケーション社会の再構築に向けて ⑵ 子育てについて ⑶ トップダウンとボトムアップ
第2部 日本経済の発展と現状
第3章 経済開発をスタートさせたエネルギーはどこにあったのか
⑴ 日本の経済開発のスタイル ⑵ ゲームの理論を地で行った日本
第4章 成熟社会の現状に対する理解
⑴ 「成熟社会」について ⑵ 懲りない成長志向 アベノミクス
第5章 日本における現在の課題
⑴ 政治と行政の間 ⑵ 日本語認識の不足による課題 ⑶ 受け身の日本人とメディアの現状維持に向けた加担 ⑷ 幼保一元化……将来の社会を担う若者を初めから分断するつもりか ⑸ このまま続けられるか 年功序列給与、終身雇用 ⑹ タテ割り・ボトムアップ社会で、いかにして「社会意識」を作るか
第3部 日本社会の未来
第6章 社会的経済でつくる未来
⑴ どこに向かうのか、日本社会 ⑵ 資源の有限性 メンテナンス社会へ ⑶ なぜ、今マニフェストなのか ⑷ 道具としての情報化 ⑸ 企業はどのように乗り越えていくのか その道一筋により、新しい伝統を作る ⑹ 分権化 ⑺ 具体的進め方としての社会的経済 ⑻ 人々が未来を展望でき、希望が持てるようになるか
終章 希望と活力とゆとりの21世紀に向けて
⑴ すでに起きている未来 ソウル市のチャレンジ ⑵ 個人によるヨコの連帯を無数に作ろう
あとがき
著者略歴
井上良一(いのうえ・りょういち)1943 年9月17 日生まれ。1967 年慶應義塾大学経済学部卒。同年、神奈川県入庁。衛生部、総務部、都市部、商工部、企画部などを経て、2001 年4月企画部次長(IT 担当)。2004 年3月退職。神奈川県の在職期間のうち約半分の期間、情報関連業務に従事。特種情報処理技術者2004 年6月~2005 年6月株式会社横浜港国際流通センター監査役相前後して特定非営利活動法人 参加型システム研究所ほかのNPO 活動に従事。現在、特定非営利活動法人 自治創造コンソーシアム副理事長2014 年6月より、ソウル宣言の会 事務局業務に携わる。
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