現代社会の喫緊の課題に挑戦する調査・研究と透徹した思索
──小野田襄二/編著『生と死-十八歳の証言 終末医療と安楽死をみつめる』
生と死-十八歳の証言 終末医療と安楽死をみつめる 小野田襄二/編著 四六判並製・414頁 定価=本体2700円+税 2018年4月刊
目次
★末期癌の患者を死に導いたある研修医の手記─終ったよ、デビー
★資料─安楽死をめぐるアメリカの動き
★献辞─十八歳にして逝った中森崇行君
第一部 安楽死の歴史的考察─医療と法の素人による分析
Ⅰ 衝撃の手記─『末期癌の患者を死に導いたある研修医の手記』
一 私の受けた衝撃
二 『手記』発表の重み
三 二つの安楽死─研修医(デビー)と山内青年(その父)
Ⅱ 『手記』発表前における安楽死裁判事件─29例をえぐる
一 先天的に身体の欠損をかかえて生まれた子供の殺害裁判事件・11例
二 安楽死殺人裁判事件・13例
三 親族による安楽死に関する際立った裁判事例・4例
四 医師による安楽死裁判事件・1例
Ⅲ 名古屋高裁判例「安楽死を認める六つの要件」の検討
一 刑法学者宮野彬の論旨(刑法学者は安楽死をどう考えるのか)
二 名古屋高裁判例(六つの要件)の検討
第二部 若者の感想文を通して「安楽死問題」に迫る─《生と死》十八歳の証言
一 医師をめざす作品から
二 医学および医師を問う作品
三 私の授業方法
四 『生と死を見つめて─十八歳の証言』の構想
五 《生と死》を正面に据えた作品5つ
六 決断に富んだ作品四つ
七 安楽死─体験に基づいて《死を透視した》作品5つ
八 人間存在の矛盾に切り込んだ作品
九 『研修医の手記』の解説
十 むすび
第三部 『手記』から現実へ!
一 論文指導?ならぬカウンセラー役を買って出た顛末
二 私は義母を自分の手で死に導いた
三 安楽死─オランダとカナダに視線を向けて
㈠ 安楽死先進文化国オランダ式安楽死の実況放送
㈡ オランダとカナダの安楽死裁判例
㈢ 安楽死先進文化国オランダの背景
㈣ マリリン・セギン正看護婦(カナダ)の機知に注視して
㈤ 最後に─マリリン・セギン正看護婦の報告への疑問
㈥ 医師と安楽死、そして《法》を問う作品六つ
㈦ オランダ式安楽死が直面した問題とは?
㈧ 星野一生『本人の意志による死の選択─オランダの場合』
四 オランダ安楽死に別れを告げて─安楽死問題の新たな視点へ
㈠ 発想の逆転
㈡ 日本における安楽死事件七例
㈢ 須田セツ子医師の著作を通して《看取り医療》の難しさを考える
㈣ 安楽死論議に別れを告げるにあたって
五 シモーヌ・ヴェイユ『権利と義務』を読む
㈠ シモーヌ・ヴェイユ『権利と義務』(駿台のテキストより私の意訳)
㈡ 解説
㈢ 駿台医系の六作品
㈣ 最首悟『星子が居る』(四三九ページより)の検討
六 《安楽死》ならぬ《介護》へ
㈠ 『人工股関節の手術から十年─いま、介護の本質を見定める』(山下宣子)
㈡ 介護される人、介護する人
㈢ 津久井やまゆり園殺傷事件を考える
1 最首悟の目
2 大島理森衆院議長宛の手紙から植松聖の《行動の動機》を読む
3 直訴文から殺害テロに実行のタイムラグ四カ月を解く
4 神経衰弱に陥った坂口安吾二十一歳の行状記
5 《植松に贈る》言葉─『二十一』を植松に重ねると……
6 「差別思想変わらぬ印象」─『東京新聞』横浜支局・宮畑譲
7 重度障碍の絶望からの叫び
8 月刊誌『創』より植松聖被告『獄中手記』を読む
七 『研修医の手記』の感想文の締めくくり─市田恭子
㈠ 依存症みたいに性質の悪い意味中毒患者
㈡ 市田への手紙
㈢ 市田の作品の締めにあたって
むすび─刊行に至るまで
解 題 島田仁郎 (元最高裁判所長官)
著者がこの問題と取り組む契機になったのは、「アメリカ医師会誌」に掲載された末期癌の患者を死に導いたある医師の手記を読んで衝撃を受けたことである。急激に(超)高齢化社会に突入し、介護する者、介護される者、それに関わる医師、看護師、ケアマネージャー等々がどんどん増えつつある今、終末医療と安楽死の問題は、正面から向き合って考えなければならない喫緊の課題である。 著者は自ら国内外の裁判例や論文等をできる限り狩猟するとともに、勤務した予備校において、医師をめざす若者たちの論文作成指導として前記研修医の手記についての感想文を提出させ、それを自らの思索を深める糧としている。今後、この問題に直面して悩むであろう多くの人々にとって、考えるヒントと勇気を与えてくれる、正に時宜を得た好個・必読の書であると言えよう。 (島田仁郎・元最高裁判所長官 による本書・解題から抜粋)
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