書評掲載
・西日本新聞2018年9月1日付 森元斎氏書評「中心のない社会運動の全体像」
現代フランスを体験したい人々のための新しいガイドブック
“左翼発祥の地”パリ。フランス革命からおよそ230年間、左翼は脈々とパワーを保ってきた。ところが2017年のW選挙で社会党は大敗、マクロンが率いる中道政党が議席の大半をさらって行った。そして社会党は崩壊の危機に陥っている。
ところがその一方で、混迷の中から新しい左翼も生まれていた。彼らは政党や労組などの既存組織に失望し、夜毎に数千人が共和国広場に集まり自分たちで討論会を開くようになった。
「立ち上がる夜」と名づけられたこの運動は「隷属することを拒否し、立ち上がろう」というメッセージを持つ。事実、「立ち上がる夜」はとてつもない潜在力を持ち、2017年の大統領選挙でもあと一歩で独自の大統領を生み出す直前にまで至っていたのだ。
フランス政界はまだまだ大きな変動が今後起きるだろう。その時、鍵を握るのは「立ち上がる夜」に参加した人々に違いない。哲学者、画廊主、映画助監督、公務員、経済学者、IT起業家、書店主、デザイナー、ジャーナリスト、学生、映像作家など、「立ち上がる夜」に参加したこれらの人々を訪ね歩き、個性的で魅力あふれる一人一人の物語を描き出す。本書は現代フランスを体験したい人々のための新しいガイドブックとなるだろう。
[主要目次]
- 第1章 パリ・共和国広場
- 第2章 社会党内閣がなぜ労働法の改正を?
- 第3章 仕掛け人 フランソワ・リュファン
- 第4章 家賃高騰と闘うレイラ・シェイビ
- 第5章 広場の哲学者と「ヘゲモニー」
- 第6章 「立ち上がる夜」は終わったのか
- 第7章 オランドの裏切りとマクロンの登場
- 第8章 政界再編の引き金となった「左翼の二つの文化」
- 第9章 社会党の仁義なき戦い
- 第10章 投票をボイコットする人々
- 第11章 立ち上がるTV
- 第12章 難民支援運動
- 第13章 海外県と植民地―ラシズム(人種差別主義)との闘い
- 第14章 芸術と政治
- 第15章 ボボ(Bobos)とプロロ(Prolos)
- 第16章 パリ郊外、エクアンの左翼一家を訪ねて
- 第17章 リュファン、国会議員になる
- エピローグ マクロン大統領の時代が始まる
2018年7月刊
立ち上がる夜
<フランス左翼>探検記
村上良太/著
定価=本体2600円+税 ISBN978-4-7845-1363-5 A5判並製320頁
むらかみ・りょうた 映画の助監督を経て、TVドキュメンタリー番組のディレクターをつとめる。主な作品として「議会占拠24日間の記録―中台急接近に揺れる台湾」(NHK)「“余った食”のゆくえ―消費期限 もうひとつの物語」(テレビ東京/ガイアの夜明け)「アメリカ経済の危機」(テレビ朝日/サンデープロジェクト)などがある。
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