[レポート]動物塚を見に行く2 上野公園・不忍池辨天堂

梅雨用にしのばせた折りたたみ傘を日傘にしたいほど6月下旬の水曜日は晴れ渡りました。夕方5時になる上野公園・不忍池はこの日、ハスの葉が水面一杯に渡っています。汗でよれよれのシャツと布の帽子をかぶった私はおじさんですが、心の中であのハスの葉から葉をピョンピョンと跳ね回る空想に余念ありません。

木陰のベンチでお姉さんの膝枕でくつろぐ男の人がいまして、あぁ上野っぽい、この辺っぽいと、通行手形のような光景にちょっと同化し始めます。すると目の前を大柄の人が欧米の方で、旅行客なのでしょうかサンダル履き、トイレから出てくる同伴者の方へスマホいじりつつ無表情で横切る。鉄棒の所では自転車を止めてツーリング姿の二人が互いに腕自慢をしています。

不忍池辨弁天堂の入り口は、シャンシャン人気の続く上野動物公園の弁天門口に近くですが、園の営業が5時で終わり、入り口通路に軒を連ねる屋台も営業の山が過ぎたようで落ちつています。

ふぐ供養碑、1965年東京ふぐ料理連盟建立

この日お堂の周辺に動物塚があることを思い出して訪ねたら、そうそうこれこれ、お目当てのフグさんがこの暑いのに堂々と乗っかっております。(ふぐ供養碑、1965年東京ふぐ料理連盟建立)他にも石碑が集まっておりますが、よくよく目を追って見ますと、鳥塚(1962年、東京食鳥鶏卵商業協同組合建立)や、スッポン感謝之塔(徳富蘇峰揮毫)も建っています。

鳥塚(1962年、東京食鳥鶏卵商業協同組合建立)

さいきんの都下はインバウンドで行くところ行くところにぎわっておりますが、ここもまた数名、数組、ハスで緑に染まった湖面の中ほどへ食い込むこの不忍池辨弁天堂の立地と建築のユニークさに誘われているようであります。

池の向こうに、ど~ん、でで~んと新しいマンションが建っている。フグ越しの景観も年々変わっているのでしょう。

マンション建設にも相当の費用はかかりましょうが、都下の歴史的にも古い一等地にこうした動物塚が建てられていることも費用や協賛があってのこと。動物塚は、いきものを通した地域の歴史を垣間見られる貴重な記録でもあるわけです。

地域に根ざしたフグやスッポンよりも、この日も見かけたスズメやハト、時にカラスといった面々に妙な親近感を抱いてしま私もまたインバウンド。そうそう、30年以上も前になりますが、子どもの頃に連れられて上野公園には何度か来ました。あの当時の観光客は国内の方が多かったのでしょうね。

暑さをしのぐ猫

文責・板垣誠一郎


2018年7月下旬刊行予定


依田賢太郎/著
いきものをとむらう歴史
─供養・慰霊の動物塚を巡る─

四六判並製・232頁
定価=本体1700円+税
ISBN978-4-7845-1742-8

生きものを弔うために古代から現代まで全国各地に動物塚が造られている。五百余りを調査し分類・編成した著者は、建立された動機の変遷を読み解き、私たちが生きものに向ける眼差しに変調のきざしを指摘する。

日本人が昔から生きものを弔ってきた数々の由来を紹介。
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2007年刊

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ペット埋葬の源流・動物塚

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内容詳細 || 依田賢太郎/著『いきものをとむらう歴史』社会評論社

[レポート]動物塚を見に行く(千葉県我孫子市)~依田賢太郎著『どうぶつのお墓をなぜつくるか』続編刊行

[レポート]動物塚を見に行く(千葉県我孫子市)~依田賢太郎著『どうぶつのお墓をなぜつくるか』続編刊行

投稿者: 社会評論社 サイト

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