今月の新刊、青木孝平著『「他者」の倫理学 レヴィナス、親鸞、そして宇野弘蔵を読む』(四六判上製/360頁/定価:本体2,600円+税/ISBN978-4-7845-1838-8/装幀:後藤トシノブ)は小社期待の作品です。書店様、図書館様からのお取り扱いお待ちしております。以下、宣伝文、目次(PDFファイル)を公開します。
他者の現前によって自己の主体性が疑問に付されること、私はこれを倫理と呼ぶ!
フッサール現象学の外部としてのレヴィナス、聖道門自力仏教を放棄する親鸞、そしてマルクス経済学を異化する宇野弘蔵。いっけん何の脈絡もないこれらの諸思想を大胆にクロスオーヴァーさせるとき、そこに、誰の思いもよらない、おそらくは読者の予想をもしのぐ、「未知の思考」が忽然と立ち現れてくる。私の「自我」をはるかに超越して、向こう側から不意に訪れる「他者」とはいったい何ものなのか? 本書は、哲学・宗教学・社会科学のバリアを軽やかに越境し、あらゆる知見を総動員してこの問いに鮮やかに答えをだす。
青木孝平/著
「他者」の倫理学
レヴィナス、親鸞、そして宇野弘蔵を読む
四六判上製/360頁/定価:本体2,600円+税
目次
はじめに
第Ⅰ部 現象学における他者
第一章 フッサールにおける独我論の哲学
1 西洋的二元論の哲学を超えて
2 超越論的主観性の現象学
3 フッサールにおける他我の明証
4 身体的存在としての他者
サルトルによる対他存在論/メルロ=ポンティによる知覚的他者
第二章 レヴィナスにおける他者論
1 ハイデガーの存在論的現象学
2 レヴィナスによるハイデガー批判
3 絶対的他者の顕現
無限性としての他者/フッサール現象学との対決
4 「顔」としての他者
5 「存在の彼方」における他者
デリダからの批判とそれへの応答/語ることの受動性
6 隔時性あるいは痕跡としての他者
7 他者の「身代わり」としての自己
第三章 レヴィナスの正義論という可能性と不可能性
1 「第三者」としての他者
2 正義論というディレンマ
まとめ ─現象学の臨界点
第Ⅱ部 仏教における他者
第一章 自己の悟りとしての仏教
1 仏教の開祖とその発展
2 南都六宗の仏教
中観派の思想/唯識派の思想/古典仏教と現代思想
3 平安仏教としての天台・真言宗
最澄における仏教の土着化/三乗一乗権実諍論/大乗戒律諍論
天台宗の自力苦行・難行/空海による密教の移入/空海の真言密教思想
平安仏教における「主体」の解体
第二章 「他者」による救いとしての仏教
1 平安末期における末法の到来
2 法然による他力思想の形成
3 法然における「本願念仏行」の選択
『選択本願念仏集』における三重の選択/弥陀の本願としての「第十八願」
4 他力のなかに残る自力
第三章 「他者」による絶対他力の思想
1 親鸞における他力思想の確立
三大諍論/愚禿親鸞の誕生
2 『教行信証』における絶対他力
教の思想/行の思想/信の思想/証の思想/真仏土と化身土の思想
3 晩年における親鸞の境位
まとめ
親鸞思想の教相判釈/現象学と仏教の比較思想史
第Ⅲ部 資本主義における他者
第一章 マルクスにおける主体の自己運動
1 疎外論における他者の不在
『経済学・哲学草稿』の弁証法/『ドイツ・イデオロギー』における主体の運動
2 『資本論』における主体としての人間労働
価値形態論における他者の欠落/貨幣から資本への自己転化
資本主義の生成・発展・崩壊論
再生産表式の不均衡論/利潤率の傾向的低落の法則/資本論の延長にあるもの
3 マルクスの論理における「自己」中心主義
第二章 宇野『経済原論』における他者の思想
1 「流通論」における他なるもの
人間労働の他としての商品/商品の外部としての貨幣/貨幣の外部としての資本
2 「生産論」における他なるもの
資本の他としての人間労働/資本の流通過程の無限性/資本の再生産過程と蓄積
3 「分配論」における他なるもの
資本と利潤/土地所有と地代/信用と利子
4 市民社会というイデオロギー
第三章 宇野『経済政策論』における他者の顕在化
1 段階論という外部
2 三大階級に対する他者
第四章 絶対他者を主体とする現状分析
1 段階論の終わり方
2 絶対他者の消滅とその痕跡
おわりに
宇野理論の思想的課題
宇野弘蔵における実践の倫理
宇野理論からレヴィナス・親鸞の「他者」へ
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(あおき・こうへい)一九五三年生まれ。鈴鹿医療科学大学教授。早稲田大学大学院法学研究科博士な課程単位取得。経済学博士(東北大学)著書『資本論と法原理』(論創社)、『コミュニタリアン・マルクス』(社会評論社)、『コミュニタリアニズムのフロンティア』(共著・勁草書房)、『現代社会学事典』(共著・弘文堂)など。