2016年9月17日に行われた講演会「ドラえもんから広がる読書の世界 ─藤子・F・不二雄没後20周年講演会」に行って参りました。講師は稲垣高広さん。「藤子不二雄マンガ」のファンとしてブログ「藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記」をつづけており、藤子マンガファンに限らず、多くのメディアからも注目されています。
藤子・F・不二雄作品や藤子不二雄Ⓐ作品いわゆる「藤子マンガ」を取り上げる企画のアドバイザー役、NHKの番組「まんが道をゆけ!」出演、さいきんでは名古屋マンガ文化研究部会がYouTubeで配信する番組「OSマンガ茶話」にも参加する稲垣さん。
「藤子マンガ」の現在をファンの立場から発信する貴重な存在であり、ひろくマンガ文化研究家として活動の幅をひろげています。(「藤子不二雄」というペンネームは、藤子・F・不二雄先生と藤子不二雄Ⓐ先生が1953年から1988年まで共同で使用したペンネーム。)
名古屋駅から関西本線で2つ目の春田駅から徒歩で少し行ったところ、住宅街や公園によりそう市民憩いの場、富田図書館があります。入り口の展示コーナーには藤子・F・不二雄作品に関する資料などの展示がされていました(期間 2016年9月〜9月30日)。
午後2時からの約1時間30分、2階の集会室で稲垣高広さんの講演会は行われました。参加者席には講演資料として市内図書館から取り寄せた「ドラえもん」コミックがそれぞれ準備。講師作成レジュメには、藤子・F・不二雄略歴、主な作品紹介、講演会で取り上げる関連書の説明がまとめられていました。
(左が講師・稲垣高広さん。右は富田図書館司書の藤本さん。)
プロジェクターを使いながら『大長編ドラえもん のび太の魔界大冒険』を中心に、作品の1コマ1コマに込められた意図を次々と掘り起こして行きます。アラビアンナイト、ギリシア神話、グリム童話、ヒッチコック映画などの古典や映画作品との関連を聞いていると、「ドラえもん」に隠された多くの仕掛け、モチーフの広さに驚かされます。
稲垣さんは『ドラえもん』にとどまらず、そこから新しい読書の魅力へ誘います。
マンガをたくさん読んでいた少年が、藤子・F・不二雄先生の描く『ドラえもん』を通じて、あるときから活字の本に接するようになったという稲垣さん。1冊のコミックから何冊もの古典が見えてくる・・・。読書をする時間の豊かさが伝わります。
講演会の副題にあるように、作者・藤子・F・不二雄先生が62歳の若さで亡くなって今年で20年が立ちます。当時はもとより、今なお多くのファンはその早すぎる死を悼んでいると思います。まだまだまだ、たくさん描いてほしかった、読みたかったですね。
「ドラえもん」はじめ先生が描いたキャラクターたちは、多くのメディアで現在も活躍しています。川崎市に開館した藤子・F・不二雄ミュージアム、小学館『藤子・F・不二雄大全集』の刊行も記憶に新しいところです。
藤子マンガのファンだった少年が、たくさんの読書経験を積みながら歳月を経て、その大好きなマンガの魅力を図書館で語った今回の講演会。マンガも活字と同じ「本」として図書館は大切に扱っていることが司書の藤本さんの説明からうかがわれます。マンガが市民生活の一部にしっかり根づいています。
社会評論社では、稲垣高広さんが『ドラえもん』のおもしろさ・奥深さ、藤子・F・不二雄の創作の魅力を掘り下げた本を刊行しています。ぜひ『ドラえもん』から広がる読書の芳醇な世界をお楽しみ下さい。
ドラえもんは物語る
─藤子・F・不二雄が創造した世界
稲垣高広/著
定価=本体1,800円+税
ISBN978-4-7845-1905-7
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