新自由主義はついに破綻。世界は動乱と革命の時代へ。
スターリンによって暗殺されたトロツキー(1879~1940)、ファシスト政権に囚われ獄死したグラムシ(1891~1937)。現代世界の変革への展望を切り拓くために、20世紀の卓越したこの2人革命家の理論・思想・革命戦略の相互補完性を検証する。
定価=本体2500円+税 ISBN978-4-7845-1861-6 A5判並製280頁
2019年2月下旬刊
目 次
序 文
第1章 ヘゲモニーと永続革命
1.「ヘゲモニー」概念の起源をめぐる従来の研究の概観 2. マルクス主義的ヘゲモニー論の起源としてのロシア・マルクス主義 3.1905 年革命とトロツキー永続革命論 4.1905 年革命における党とソヴィエト 5. 反動期におけるヘゲモニーと陣地戦 6.1917 年革命とヘゲモニーの実現 7.10 月革命の衰退とスターリニズム 8. ヘゲモニー論と革命論の新たな探求へ
第2 章 トロツキーとグラムシの交差点 ──1923 ~ 24 年初頭の手紙を中心に
1. はじめに──本稿の課題 2. イタリアからモスクワへ 3. 前哨戦── 1923 年5 月の手紙 4. モスクワからウィーンへ 5. ウィーン時代 6. グラムシの書簡闘争Ⅰ ──1924年1 月の手紙 7. グラムシの書簡闘争Ⅱ ──1924年2 月の手紙 8. おわりに──交差から再分離へ
第3章 グラムシはトロツキーを非難したのか? ――ある「前書き」の謎
1. グラムシの「前書き」の謎 2. グリゴリエヴァ論文と謎の氷解 3.「前書き」の具体的検討 4. なぜ前半部分は注釈なしにそのまま収録されたのか?
第4章 トロツキーの永続革命論とグラムシの受動的革命論
1. トロツキーの永続革命論の基本性格 2. 永続革命論の普遍的意義 3. グラムシの「永続革命」認識 4.「獄中ノート」におけるグラムシの受動的革命論 5. 受動的革命とファシズム
第5章 ロシア・マルクス主義とヘゲモニーの系譜学 ――ある神話への批判
1. グラムシ『革命論集』におけるある訳注をめぐって 2. マルクス主義世界における「ヘゲモニー」概念の起源 3. レーニンにおけるヘゲモニー概念の使用をめぐる誤認 4. コミンテルンで「ヘゲモニー」概念を普及したのは誰か? 5. スターリンの『レーニン主義の基礎について』の独自の役割
第6章 ホブズボームのグラムシ論を批判的に読む ――補助線としてのトロツキーとロシア革命
1. グラムシ思想のイタリア的起源 2. グラムシの理論的オリジナリティ 補論1 マルクス・エンゲルスにおける「ヘゲモニー」使用例 補論2 レーニンにおける「ヘゲモニー」使用例
著者による各章解題
第1章 ヘゲモニーと永続革命
【解題】本稿はもともと、『トロツキー研究』第58・59 合併号(2011年)に掲載されたものであり、当初はもっと簡潔なものであった。この論文を補完するものとしてより文献考証的な論文「トロツキー、レーニン、グラムシにおけるヘゲモニー概念の継承関係」上下(『ニューズ・レター』第53&54合併号、第55号、2012年)を執筆したからである。だからこの二つの論文は本来はセットになっていたのだが、後者の論文は分量があまりにも膨大になったので、今回は思い切って割愛し、その代わり、その一部を今回の論文の中に取り入れることにした。本稿は、表題からも明らかなように、トロツキーとグラムシとの関係についての総合的な論考であり、本書全体の手がかりを与えるものである。
第2 章 トロツキーとグラムシの交差点 ――1923 ~ 24 年初頭の手紙を中心に
【解題】本稿は、1999 年に出版された『トロツキーとグラムシ――歴史と知の交差点』(片桐薫&湯川順夫編、社会評論社)に収録された論文である。さらにこの論文集のもとになったのは、1998年11月にトロツキー研究所と東京グラムシ会との共催で開催されたシンポジウム「トロツキーとグラムシ――その歴史と知の交差点」での報告である。このシンポジウムには全国から100 名近い参加があって成功を収めた。今回、収録するにあたって、若干の加筆をするとともに、注の入れ方を若干変え、節ごとではなく、通し番号にした。
第3章 グラムシはトロツキーを非難したのか? ――ある「前書き」の謎
【解題】本稿はもともと、『葦牙』第34号(2008年)に掲載された論文である。本文に書いてあるように、ロシアのグラムシ研究者が書いたある論文の注を読んでびっくりし、すぐに大学図書館に行って、その研究者の言うとおりであるかどうかを調べた上で一気に書き上げた。私がここで書いた事実につい
てはおそらく今なお多くの研究者が知らないことだと思われるので、ぜひともグラムシ研究者に読んでもらいたいと思っている。
第4章 トロツキーの永続革命論とグラムシの受動的革命論
【解題】この論考はもともと、『トロツキー研究』第51号(2007年)に掲載されたものである。これまで私はグラムシの理論にトロツキーが与えた影響という観点から多くの論文を書いてきたのだが、ここでは、このような影響関係とは別に、両者の(弁証法的な)思考や理論に一定の相似性が認められることを明らかにしようとした。他の諸論点に即してもこのような議論は可能だろう。いずれにせよ、グラムシの理論を理解するには、同時代の最も優れた理論家との関係において考察することが最も有益であるのは間違いないところである。今回、収録するにあたって若干の加筆・修正を行なっている。
第5章 ロシア・マルクス主義とヘゲモニーの系譜学 ──ある神話への批判
【解題】本稿はもともと『情況』2017 年秋号に掲載されたものである。執筆自体は2017 年3 月頃だったが、『情況』のロシア革命特集号に掲載したほうがいいということで、半年ほど待たされることになった。マルクス主義におけるヘゲモニーの系譜について論じた本章は、第1章の補完的な意味を持っている。今回収録するにあたって全体として若干の加筆をしている。
第6章 ホブズボームのグラムシ論を批判的に読む ──補助線としてのトロツキーとロシア革命
【解題】2018 年2 月19 日、私はルネサンス研究会に招かれて、前年に翻訳が出版されたホブズボームの『いかに世界を変革するか──マルクスとマルクス主義の200 年』(作品社、2017 年)に関する報告をすることになった。そこでは、この膨大な著作の中から二つの論点を抽出し、それぞれについて報告を行なった。一つは、マルクス、エンゲルスによるロシア革命の本格的な議論がいつ始まったのかについてであり(この部分は、トロツキー研究所発行の『ニューズ・レター』第64・65 合併号、2018 年に「マルクス・エンゲルスのロシア革命論の変遷」と題して掲載)、もう一つはホブズボームのグラムシ論についてである。本稿はこの二番目の報告についてのみ文章化したものである。文章化する過程で、いつものように大幅に内容が拡充された。この論文は『葦牙』第44 号(最終号)に掲載された。本書に収録するにあたって、さらにいくつか部分的な修正をほどこした。
著者紹介
森田成也(もりたせいや)大学非常勤講師
・主な著作
『資本主義と性差別』(青木書店 1997年)、『資本と剰余価値の理論』(作品社 2008年)、『価値と剰余価値の理論』(作品社 2009年)、『家事労働
とマルクス剰余価値論』(桜井書店 2014 年)、『マルクス経済学・再入門』(同成社 2014年)、『ラディカルに学ぶ「資本論」』(柘植書房新社 2016 年)、『マルクス剰余価値論形成史』(社会評論社 2018 年)
・主な翻訳書
デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』『<資本論> 入門』『資本の<謎>』『反乱する都市』『コスモポリタニズム』『<資本論> 第二巻・第三巻入門』(いずれも作品社、共訳)、トロツキー『わが生涯』上(岩波文庫)『レーニン』『永続革命論』『ニーチェからスターリンへ』『ロシア革命とは何か』、マルクス『賃労働と資本/賃金・価格・利潤』『「資本論」第一部草稿──直接的生産過程の諸結果』(いずれも光文社古典新訳文庫)、他多数。
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