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1936年ナチス政権が開催したベルリンオリンピック。日本代表としてマラソン競技に出場し、金メダルを獲得した孫基禎。その波瀾にみちた生涯とスポーツに託した夢に迫るドキュメンタリー。
四六判並製・160頁 定価=本体1,400円+税
ISBN978-4-7845-1569-1 2019年4月刊
著者より読者へ
この評伝をお読みになった皆様には、孫基禎さんの人生に現れた朝鮮植民地支配が、いかに人間の尊厳を踏みにじり、土足で人の心を踏みつけたのか、その歴史の一端に思いをはせていただきたい。連行される写真の、困惑し、悲しい目をした孫基禎さんの顔は、そのことを物語っている。
だが、植民地支配のもとで受けた非人間的な差別・弾圧に、彼が恨みを持つことはなかった。韓国選手が出場できなかった1951年のボストンマラソンで、優勝した日本人選手・田中茂樹のもとに、朝鮮戦争の激しい戦火の中から心温かい電報を打っている。「田中君の優勝は、アジア人の優勝です。こころより祝福します。ソンキテイ」。その気持ちを思うと私は胸が熱くなる。
1983年の明治大学で開かれた「スポーツと平和を考える会」に参加した孫基禎さんは、スポーツマンは平和の問題に真摯に向き合わなければならないと呼びかけた。そして自身が尽力された2002年のサッカー・ワールドカップ日韓共催が両国間の深い溝をうめ、文化・スポーツの交流に寄与したことは記憶に新しい。
孫基禎さんの人と思想を胸に、我々も世界の友好連帯の促進にスポーツで何が出来るか、何をすべきかを考えなければならないと改めて思う。
著者(エピローグより抜粋)
目 次
はじめに
プロローグ オリンピズムと孫基禎
ペンシルバニア司教とクーベルタン男爵
孫基禎とオリンピズム
第一部 孫基禎の歩んだ道
(1)生い立ち
岸辺のランニング
日本での丁稚奉公
(2)マラソンランナーへの道
陸上名門の養正高校
長距離選手からマラソンランナーへ
(3)ベルリンオリンピックを目指して
五輪代表への道のり
代表選考の混乱
現地での選考会
(4)一九三六年ベルリン
マラソン競技
マラトン戦士の青銅の兜
大島鎌吉との出会い
(5)失意の表彰式
決戦の場へ
優勝で沸き返る朝鮮半島
胸を隠した月桂樹
(6)植民地支配の朝鮮における監視と弾圧
消えた日の丸─『東亜日報』発禁事件
「太極旗」と初めて対面
連行と取り調べ
高麗大進学と弾圧
明治大学留学と走れなかった箱根駅伝
(7)祖国の解放とスポーツに生きる決意
ふたたび国際舞台へ
朝鮮マラソン普及会
(8)メダル独占のボストンマラソン
ボストンマラソン
旧友との再会
歴史的快挙にあふれる涙
(9)朝鮮戦争の教訓
戦争勃発
日本の仲間とスポーツ・平和を考える
(10)世界へのまなざし
一九八八年ソウル五輪
プロ野球の日韓交流
明治大学特別功労賞
(11)かなった夢と死出の旅
一九九二年バルセロナの黄永祚
二〇〇二年サッカー・ワールドカップ
第二部 蘇る孫基禎の人とスポーツ哲学
(1)孫基禎を偲んで
日本人関係者不在の葬儀
偲ぶ会
ヨーロッパの人びとに伝えたい
生誕百年とロンドン五輪
生誕百周年記念シンポジウム
胸を打つ柳美里の秘話
(2)夢の彼方に
エピローグ 歴史事実と日韓の相互理解
孫基禎 年表
〔資料編〕
■オリンピズムの根本原則 ■スポーツと平和、オリンピズム 珠玉の言葉 ピエール・ド・クーベルタン フィリップ・ノエル・ベーカー キラニン男爵(マイケル・モリス) モハメッド・アリ ベラ・チャスラフスカ エミール・ザトペック キャシー・フリーマン 何振梁 荻村伊智朗/松崎キミ代/川本信正(資料編扉の言葉)
『評伝 孫基禎』刊行に寄せて 孫正寅
賛助団体・個人一覧
著者紹介
寺島善一(てらしまぜんいち)明治大学名誉教授
1945 年 名古屋市生まれ
1968 年 東京教育大学卒 名古屋学院大学助手・講師
1974 年 明治大学専任講師 1979 年明治大学助教授
1982 年~1983 年
英国Brunel University(元 West London Institute of Higher Education)客員研究員
1984 年 明治大学教授
1998 年、2006 年 英国 St. Mary’s University 客員教授
2016 年 明治大学名誉教授
著 書
「リベラルアーツと大学の自由化」(共著)明石書店
「境界を超えるスポーツ」(共著)創文企画
「現代のスポーツ百科事典」(共著)大修館書店
「『身体・スポーツ』へのまなざし」 風間書店
翻 訳
「現代社会とスポーツ」 Peter C McIntosh 著 大修館書店
「スポーツの世界地図」 Alan Tomlinson 著 丸善出版
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