自主生産と地域ユニオンによるコミュニティ型労働組合の形成へ。
はじめに(抜粋)
『時代へのカウンターと陽気な夢─労働運動の昨日、今日、明日』と題する、この冊子は一九六〇年代後半から今日に至るまで労働運動の第一線で活躍し多くの成果・教訓を残してきた平山昇さん、小野寺忠昭さん、小畑精武さんが中心となって企画・編集・出版される。
小野寺さんは東京地評(東京地方労働組合評議会)の東京東部ブロックの担当オルグとして東京の下町、東部の七地区労の連携のもと七〇年~八〇年代まで地域共闘の代表格として活動を活性化させてきた東京東部ブロック共闘の中軸を担ってきた。小畑精武さんもまた、東部・江戸川区労協の専従オルグとして東部労働運動の中核を担い、八〇年代後半にはじめての地域ユニオンとして江戸川ユニオンを立ち上げた中心人物である。
平山昇さんはこの時代に生活協同組合で活動し、ワーカーズコレクティブ運動や労働者生産協同組合運動を提唱し倒産争議の中で自主生産を続けていた労働組合とワーコレを結びつけた一人である。
この三人が中心となり一九六〇年代後半から八九年総評解体、多数派の連合と全労連・全労協に三分割された労働組合運動と現在までに至る歴史の中で、各運動分野で現場の運動を担ってきた活動家の証言として「明日」に残すべきものは何かを提起しようとしたのが、この冊子である。
各章の筆者の方々は一九六〇年代後半から現在に至る日本の労働組合の画期となる諸運動を担い中心的に活動されてきた第一線の人々で、労働組合運動としては主に総評労働運動の後半部分を担い、地域共闘や争議共闘などの分野で活躍した方々であり、編集に携わった三人のいずれかと運動の関わりを持ちその運動の拡大強化に互いに力を尽くした関係者である。この世代の活動家は主に団塊の世代と呼ばれた戦後世代であり、七〇年の安保・学園闘争、ヴェトナム反戦闘争の中で青春時代を過ごしてきた所謂、全共闘世代・ヴェトナム反戦世代である。この冊子の筆者の多くが、この時代の中で闘いを通して労働運動に惹かれ労働組合運動に飛び込んだ方々であり、各分野で新しい労働運動へ向けて成果と実績をあげてきた第一線の活動家の皆さんである。
平賀健一郎
目 次
はじめに 平賀健一郎
第一章 東京東部の労働運動
㈠ 総評運動と地区労運動 ・・・ 小畑精武
㈡ 反合闘争と自主生産闘争 ・・・ 小野寺忠昭
㈢ 労働者協同組合の可能性─パラマウント製靴共働社 ・・・ 平山 昇
第二章 総評解体と闘う労働運動
㈠ 総評解体史分析から見えてくる日本労働運動の歴史的課題 ・・・ 川副詔三
㈡ 東京総行動と争議、自主生産 ・・・ 小野寺忠昭
㈢ 国鉄闘争と東京総行動 ・・・ 平賀健一郎
㈣ 国鉄闘争そしてユニオンへ ・・・ 関口広行
㈤ コミュニティユニオンがめざしたもの ・・・ 小畑精武
*コラム「友愛と仁義と」 ・・・ 小野寺忠昭
第三章 企業別労働組合から社会的労働運動へ
㈠ 現代企業別労働組合批判と「関生型労働運動」 ・・・ 要 宏輝
㈡ まっとうな移民政策を─労働者が労働者として移動する社会へ ・・・ 鳥井一平
㈢ 地域ユニオン運動の可能性─社会福祉施設の自主管理 ・・・ 嘉山将夫
㈣ 韓国の労働運動から学ぶこと─労働尊重社会の実現のための合同労組運動を目指して ・・・ 須永貴男
㈤ 介護労働運動を社会的労働運動の中軸に! ・・・ 中村 登
㈥ 社会的有用生産・労働の復活 ・・・ 都筑 建
㈦ 生協の労働組合─組合員パートさんの組織化へ ・・・ 岩元修一/大場香代
*コラム「一労働基準監督官から見える労働問題」 ・・・ 井谷 清
第四章 新しい労働運動の構想
㈠ 次は何か ・・・ 小野寺忠昭
㈡ 時代は〝市民運動ユニオニズム〟─労働NPO、市民運動ユニオニズムの可能性 ・・・ 小畑精武
㈢ 健常者と市民社会と労働力商品化を止揚して ・・・ 堀 利和
㈣ 新しい労働運動のいち構想 ・・・ 白石 孝
㈤ 労働者自主生産の可能性 ・・・ 志村光太郎
㈥ 社会的連帯経済と労働運動 ・・・ 平山 昇
*コラム「減部に負けない『労働情報』」 ・・・ 水谷研次
第五章 労働運動への提言
㈠ 労働力商品化の止揚と『資本論』の再読─労働運動の再生と労働力再生産の視点 ・・・ 大内秀明
㈡ 『資本論』の社会主義論─「労働力商品化」廃絶ということの意味 ・・・ 鎌倉孝夫
㈢ 関生型中小企業労働組合の「産業政策」闘争─生コン産業における中小産別労働組合と事業協同組合の共闘 ・・・ 樋口兼次
㈣ 関生型協同運動に期待する ・・・ 伊藤 誠
おわりに ・・・ 平山 昇
執筆者紹介
A5判並製 本文2段組 360頁 定価=本体2500円+税
2019年5月刊
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出版書誌データベース(Books)
【著者紹介】 (※本書掲載順、生年、出身地、略歴、著作は近作の本) 平賀健一郎(ひらが・けんいちろう) 1941 年生まれ、元総評東京地評オルグ。中小労組政策ネットワーク代表。共著『ひとりで闘う労働紛争』(共著、緑風出版2017 年)。 小畑精武(おばた・よしたけ) 1945 年生まれ。江戸川地区労オルグ、コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク初代事務局長、自治労本部オルグ。『アメリカの労働社会を読む事典』(共著、明石書房2012 年)ほか。 小野寺忠昭(おのでら・ただあき) 1943 年東京生まれ、元総評東京地評東部担当オルグ。『地域ユニオン・コラボレーション論』(インパクト出版会2003 年)。 平山 昇(ひらやま・のぼる) 1949 年、東京都生まれ。元たつみ生協(現パルシステム東京)職員。『土着社会主義の水脈を求めて―労農派と宇野弘蔵』(共著、社会評論社2014 年)。 川副詔三(かわぞえ・しょうぞう) 1942 年生まれ、元神奈川県評オルグ、「地域と労働運動」主幹。『What was 国鉄闘争~そして次へ~』(ぶなの木出版2013 年)。 関口広行(せきぐち・ひろゆき) 1958 年、群馬県生まれ。国労高崎地方本部委員長。 要 宏輝(かなめ・ひろあき) 1944 年、香川県生まれ。67 年総評全国金属労組大阪地方本部、91 年金属機械労組大阪地本書記長、99 年連合大阪専従副会長。『正義の労働運動ふたたび』(単著、アットワークス2007 年、日本労働ペンクラブ賞)ほか。 鳥井一平(とりい・いっぺい) 1953 年、大阪生まれ。全統一労働組合特別執行委員、NPO 法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事。人身売買禁止全国ネットワーク(JNATIT)共同代表、2013 年アメリカ国務省から「人身売買と闘うヒーロー」賞受賞。 嘉山将夫(かやま・まさお) 1951 年、東京生まれ。全国一般埼京ユニオン委員長。 須永貴男(すなが・たかお) 1947 年、群馬県生まれ。群馬合同労組副委員長。 中村 登(なかむら・のぼる) 1949 年、兵庫県生まれ。元神戸市職員。元訪問介護事業所神戸ケアセンター所長。 都筑 建(つづく・けん) 1942 年、長崎県生まれ。71 東芝アンペックス労働組合書記長、93 ワーカーズ・コープ エコテック代表、認定NPO 法人太陽光発電所ネットワーク代表理事。 岩元修一(いわもと・しゅういち) 1955 年、鹿児島県生まれ。全労協全国一般東京労組パルシステム東京労働組合 大場香代(おおば・かよ) 1973 年、東京都生まれ。パルシステム東京職員。ケアマネージャー。 井谷 清(いたに・きよし) 生年非公開。現役の労働基準監督官として、監督指導その他様々な業務に従事。 堀 利和(ほり・としかず) 1950 年、静岡県生まれ。89 ~、98 ~参議院議員を二期務める。NPO 法人共同連代表。『アシエーションの政治・経済学』(社会評論社2016 年)ほか。 白石 孝(しらい・たかし) 1950 年生まれ。荒川区職員労働組合顧問(元書記長)。NPO 法人官製ワーキングプア研究会理事長。希望連帯代表。『ソウルの市民民主主義』(コモンズ2018 年)。 志村光太郎(しむら・こうたろう) 1967 年、神奈川県生まれ。合同会社国際人材戦略研究所代表。『労働と生産のレシプロシティ』(世界書院2018 年)。 水谷研次(みずたに・けんじ) 1949 年東京生まれ。元江戸川区労協・墨田区労連オルグ、元連合東京事務局。『知らないと損する労働組合活用法』(共著、東洋経済新報社2010 年)。 大内秀明(おおうち・ひであき) 1932 年、東京生まれ。東北大学名誉教授。仙台・羅須地人協会代表。『自然エネルギーのソーシャルデザイン ──スマートコミュニティの水系モデル』(鹿島出版会2018 年)ほか。 鎌倉孝夫(かまくら・たかお) 1934 年生まれ。埼玉大学名誉教授。『新自由主義の展開と破綻─「資本論」による分析と実践課題』(社会評論社2019 年)ほか。 樋口兼次(ひぐち・けんじ) 1943 年、東京生まれ。白鴎大学名誉教授。『日本的生産合作社』(中国青年出版社2013 年)ほか。 伊藤 誠(いとう・まこと) 1936 年生まれ。東京大学名誉教授。日本学士院会員。『資本主義の限界とオルタナティブ』(岩波書店2017 年)ほか。 金瀬 胖(かなせ・ゆたか) 1944 年千葉県生まれ。写真家。元荒川区労協オルグ。写真集『ZONE』で第12 回「写真の会」賞。写真集『路上の伝記』ほか。 今井 明(いまい・あきら) 1953 年生まれ。写真家。