1914年、世界危機に直面したレーニンは、ヘーゲル哲学の再検討をとおして、新たな革命理論を確立する。その思想的転換を検証して、現代的意義を問う。
1914年以後、レーニンのヘーゲルに関する研究は、帝国主義、民族解放、国家と革命という直面する政治的・経済的な諸課題を解明するための哲学的根拠であった。その「ヘーゲル・ノート」「戦闘的唯物論の意義」は、ジェルジ・ルカーチからアンリ・ルフェーブルへ、そしてラーヤ・ドゥナイェフスカヤからルチオ・コレッティおよびルイ・アルチュセールへと西欧におけるマルクス主義理論家の多くに、重要な影響を及ぼした。
著者によるこの「新しいレーニン像」の解明は、岐路にたつ現代世界の変革に向けて、マルクス主義の再生への貴重な思想的提起である。
【主要目次】
日本語版への序言
第1部 ヘーゲルと弁証法に関するレーニン
第1章 1914年の世界マルクス主義の危機とレーニンのヘーゲル研究への没頭
第2章 有(存在)と本質についてのヘーゲル概念に関するレーニンの所見
第3章 主観的論理学:レーニンの1914年ヘーゲル研究の核心
第4章 レーニンの弁証法議論(1915-23年):両義的で隠し立てするヘーゲル主義
第2部 レーニンと革命の弁証法 1914-23年
第5章 帝国主義と主体性の新しい諸形態:民族解放の諸運動
第6章 国家と革命:主体、草の根民主主義、そして官僚制批判
第3部 レーニン、ヘーゲルおよび西欧マルクス主義
第7章 1920年代から1953年まで:ルカーチ、ルフェーブル、ジョンソン─フォレスト・グループ
第8章 1954年から現代まで:ルフェーブル、コレッティ、アルチュセール、そしてドゥナイェフスカヤ
結論:レーニンの逆説的遺産
[付録]ヘーゲルと社会理論の興隆について(マルクーゼ)
ISBN978-4-7845-1578-3 C0030
A5判上製・544頁 定価:本体5400円+税
ケヴィン・アンダーソン Kevin Anderson
1948年生まれ。カリフォルニア大学教授。関心領域は、マルクスやヘーゲルを中心に、フランクフルト学派、フーコー、オリエンタリズム論争など多岐わたる。『マルクス=エンゲルス全集』(WEGA)編集委員。邦訳著書として『周縁のマルクス―ナショナリズム、エスニシティおよび非西洋社会について』(社会評論社、2015)がある。