石塚正英著『革命職人ヴァイトリング』目次の詳細です。
革命職人ヴァイトリング― ―コミューンからアソシエーションへ
*目 次
はしがき
序 論 当該分野の研究史と本研究の目標
一 諸外国、とりわけドイツ
二 日本、とりわけ一九六〇年以降
第Ⅰ部 前期ヴァイトリング 一八四八年以前・ヨーロッパ
第1章 ドイツ手工業職人の結社運動
第1節 義人同盟の結成とヴァイトリング
一 ドイツ手工業職人の結社運動
二 義人同盟の結成とヴァイトリング
第2節 義人同盟の政敵・青年ドイツ派
一 一八三〇年代の青年ドイツ派
二 ヴァイトリングの青年ドイツ派攻撃
三 マールの青年ドイツ派再建
四 スイスにおけるドイツ人急進主義者の敗退
第3節 義人同盟と青年ヘーゲル派――ブルンチュリ報告書を手掛りに
一 ブルンチュリ報告書のアウトライン
二 ヴァイトリング思想の一面的伝達
三 シュタイン著作の紹介
四 職人(義人同盟)・学者(青年ヘーゲル派)間の接点提示
第4節 義人同盟の改組―共産主義者同盟
一 若きマルクスの哲学的共産主義
二 ヴァイトリングとマルクスの論争
三 共産主義者同盟の結成
四 『共産主義者宣言』に記されたKommunisten およびPartei の意味
補 論 『ヴィガント四季報』掲載の宣伝広告に「三月前」期をよみとる
第2章 同時代思想との比較における歴史認識と現状批判
第1節 キリスト教に対する評価
一 改革手段としての積極的評価
二 攻撃対象としての否定的評価
第2節 現状批判と未来社会の構想
一 Vormärz 期における政治的急進化
二 現状と未来の哲学的考察
三 現状と未来の実践的把握
第3節 ドイツ革命の展望―革命路線の確定
一 ヴァイトリングの〔革命即社会革命〕論
二 ヘスの〔イギリス↓ドイツ〕的社会革命論
三 マルクス・エンゲルスの〔二段階革命〕論と一八四八年の試練
第4節 革命後における過渡期の設定
一 ヴァイトリングの〔刹那の独裁〕
二 バクーニンの〔プラハの独裁〕
三 Vormärz 期における独裁理論の特徴点
第3章 下層労働者の社会思想
第1節 社会的匪賊への親近感
一 ヴァイトリングの所有論
二 Sozialbandit(社会的匪賊)
三 ヴァイトリングの窃盗理論とSozialbandit
四 人間の根原的な権限の回復
第2節 旧約・新約聖書の援用
一 プロパガンダとしてのメシア・コムニスムス
二 所有権をめぐるモーセ評価
三 新約聖書の諸矛盾
四 原始キリスト教信仰の系譜
五 神の剣をもった革命指導者イエス
第3節 セネカ思想への遡及
一 義人同盟内での論争――一八四五〜四六年
二 ルソー・セネカへの遡及
三 イェルサレムのイエス
四 一九世紀の庶民的読書法による一成果
第4節 ユートピア社会主義のアクチュアリティ――『共産主義者宣言』批評
一 歴史の車輪を反対にまわす中間身分
二 消極的な腐敗物ルンペン・プロレタリアート
三 それ自身国民的なプロレタリアート
四 『宣言』の現代的意義
第Ⅱ部 後期ヴァイトリング
一八四八年以後・アメリカ
第4章 コミューン論からアソシアシオン論へ
第1節 ヴァイトリングの解放同盟――一八四八年を中心に
一 ニューヨークの解放同盟
二 ベルリンでの宣伝活動
三 ハンブルクでの最後の抵抗
四 大西洋のむこう、労働者の共和国へ
第2節 北アメリカ移住
一 活動の背景――一九世紀前半期アメリカにおけるドイツ人労働者運動
二 活動の足場づくり――機関紙創刊
三 運動方針の提起――労働者銀行
第3節 交換銀行構想へ至る道
一 三月前における銀行観――消極的評価からの脱却
二 一八四八年段階の銀行観――積極的評価
三 一八五〇年代における銀行観――実践の中心的テーマ
第4節 労働者協同企業の提唱
一 太平洋への横断鉄道――資本家に対抗
二 労働者企業と交換銀行の結合――国家に対抗
三 コロニー「コムニア」の建設とその失敗――もうひとつの「協同」志向
補 論 ヴァイトリング編集『第一次選挙人』(ベルリン 一八四八・一〇)を読む
第5章 アメリカ民主主義に対抗する社会的民主主義
第1節 諸系譜雑居のヴァイトリング思想
一 初期社会主義のこんにち的意義
二 諸系譜雑居のヴァイトリング社会主義――バブーフ・ブランキの系譜
三 諸系譜雑居のヴァイトリング社会主義――サン=シモン、フーリエ、プルードンの系譜
四 一九世紀社会主義の二一世紀的射程
第2節 プルードン思想の批判的受容
一 ヴァイトリングとプルードンの親近性――所有は盗みである
二 貨幣廃絶への意欲――権力奪取に先行する経済革命
三 革命政府に対する態度とルイ=ナポレオン観――原則とマヌーヴァー
第3節 ドイツ系移民組織化の試み
一 一八四八〜四九年の移民――ドイツ系を中心に
二 ドイツ系移民の足跡――今となっては無名の移民たち
三 ドイツ系移民の足跡――移住ドイツ人のリーダーたち
四 ニューヨークのヴァイトリング――『労働者共和国』の記事から
五 ニューヨークのヴァイトリング――社会的デモクラシーの実現
六 四八年革命人にとってのアメリカ
第4節 ニューヨークのクリーゲとカウンター・メディア
一 ヘルマン・クリーゲの根本思想
二 アメリカでの活動
三 もうひとつのクリーゲ評価
四 草創期のカウンター・メディア
五 ナショナル・リフォーマーと『ニューヨーク・トリビューン』
六 ゾツィアル・レフォーマーと『フォルクス・トリブーン』
七 特殊アメリカ的状況
八 カウンター・メディアの将来的展望
補 論 フランス革命期における 「tribune」紙の登場――バブーフ
補 論 ヴァイトリング編集『労働者共和国』(ニューヨーク、一八五〇〜一八五五年)
結 論 ヴァイトリング思想の統一的全体像を求めて
ヴァイトリング略年譜
あとがき
ヴィルヘルム・ヴァイトリングとその周辺関係 石塚正英著作目録
(著者あとがきより抄録)
一九七〇年に発する私のヴァイトリング研究は、これまで四五年以上にわたるわが研究歴の端緒であり経過であり、深層である。
本書は、ヴァイトリングに関連する拙著七点――『叛徒と革命』(一九七五年)、『三月前期の急進主義』(一九八三年)、『ヴァイトリングのファナティシズム』(一九八五年)、『社会思想の脱・構築』(一九九一年)、『アソシアシオンのヴァイトリング』(一九九八年)『近世ヨーロッパの民衆指導者〔増補改訂版〕』(二〇一一年)――、そして論文「欧米新聞紙上における紙名『Tribune』の意味」(二〇一四年)を括りつける総決算である。
私の研究歴を追跡すると、およそ二本の道筋(テーマ)が確認される。
一つは行動における価値転倒・地位転倒であり、これはヴァイトリング研究に発し、カブラル研究に行き着く、いわば横倒しとなった世界史、あるいは多様化史観の探索である。
いま一つは思索における価値転倒・地位転倒であり、これはフォイエルバッハ→シュトラウス→ド・ブロスへと向かう、神々と自然、神々と人間の地位が回転する世界の探究である。あるいは社会と国家の地位が転倒する世界の発見である。
この二筋を、私は学界・読書会にもっと見えるように提起したいと思っている。
石塚正英
ISBN978-4-7845-1842-5 C0030
定価:本体5,600円+税
A5判上製 560頁