いま、フェティシズム概念の本来に立ち返る意義とは──。神々と自然、神々と人間の地位の回転。あるいは社会や国家の地位の転倒。こうした価値転倒の構造や現象について18世紀の啓蒙思想家シャルル・ド=ブロスが初めて術語フェティシズムを用いた。人類に今なお求められる概念の歴史を解く。『学問の使命と知の行動圏域』『フォイエルバッハの社会哲学』に続く社会哲学・社会思想史研究の完結編。
第一部 フェティシズム概念の転回
第一章 〔交互〕と〔転倒〕
第一節 ポジティヴ・フェティシズム
第二節 〔転倒〕の意味 ―フーリエ、プルードンを参考に」
第三節 フェティシズムにおける〔交互〕と〔転倒〕
第二章 フェティシズム論のヴァリエーション
第一節 人類の司法官たる岩石・樹木 ― ルソー
第二節 可視的原因の信仰 ―サン=シモン
第三節 イドラトリ説放棄 ―コントおよびサン=シモン派
第四節 動物崇拝先行説 ―ヘーゲル
第二部 先史・野生のフェティシズム解明
第三章 ド=ブロスの『フェティシュ諸神の崇拝』に読まれるフェティシズム
第一節 ド=ブロス著作の構成と内容 ―プルタルコス批判
第二節 西アフリカほかに残るフェティシュ信仰 ―フエダの縞蛇神
第三節 古代世界のフェティシュ信仰 ―パピルス・カシワ樹
第四節 フェティシュ信仰成立の根拠 ―原初的生活者の直観
第四章 エウセビオスの中のサンコニアトン
第一節 ディオドルス断章 ―『歴史文庫』
第二節 エウセビオスの慧眼 ―『福音の準備』
第三節 サンコニアトン断章 ―『フェニキアの歴史』
第五章 ヘブライ語版旧約聖書におけるセイリムとヘベル
第一節 選ばれた民のフェティシュ信仰 ―モーセ、フェティシュ崇拝を厳禁
第二節 ラテン語訳版旧約聖書のアレゴリー ―pilosusの多義性
第三節 ヘブライ語版旧約聖書にみる原初性 ―seirimとhebelの関係性
第四節 SacheとBild ―ルートヴィヒ・フォイエルバッハの宗教改革
第六章 フレイザー『金枝篇』に読まれるフェティシズム
第一節 呪術のフェティシズム ―ド=ブロスに還れ
第二節 『金枝篇』のフェティシズム ―the deities themselves
第三節 フレイザーの不実 ―タイラー学説でフェティシズムを解釈
付録資料 グラント・アレン著、石塚正英訳「供犠と聖餐」
石塚正英 いしづか・まさひで 立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学、同研究科哲学専攻論文博士(文学)。1982年~、立正大学、専修大学、明治大学、中央大学、東京電機大学(専任、2020年3月退職)歴任。2008年~、NPO法人頸城野郷土資料室(新潟県知事認証)理事長(現在に至る)。 著書に『革命職人ヴァイトリング―コミューンからアソシエーションへ』『地域文化の沃土 頸城野往還』『マルクスの「フェティシズム・ノート」を読む―偉大なる、聖なる人間の発見』『ヘーゲル左派という時代思潮―A.ルーゲ/L.フォイエルバッハ/M.シュティルナー』以上、社会評論社。『アミルカル・カブラル―アフリカ革命のアウラ』柘植書房新社刊ほか。
四六判上製・206ページ ISBN978-4-7845-1581-3
定価=本体2200円+税
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