紹介されました しんぶん赤旗 2020年11月1日付け掲載 本と話題「日韓の歴史を知る本 植民地支配の事実を知り未来を開く」
時効なき日本軍「慰安婦」問題を問う
纐纈厚、朴容九/編
「慰安婦」問題の研究交流には、国境を越えて未来を共有する可能性を提案する役割がある。問題の論じ方とその実証をめぐる議論を深めて編まれた本書はグローバリティとローカリティ2つの視座、8つの論文で構成。帝国日本の女性に対する人権侵害の負の歴史と、戦後それを放置して失われたままの日本国家への信頼。たとえ世代が変わろうとも、〝不作為の行為〟の責任が無時効性に問われていることを論じる。
定価=本体2700円+税 ISBN978-4-7845-1582-0 四六判並製304頁
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目 次
はしがき 朴容九
第Ⅰ部 日本軍「慰安婦」問題のグローバリティ
序 章 日本軍「慰安婦」の転生と解恨
朴容九
1▪渡嘉敷島の「慰安婦」 2▪「慰安婦」問題のグローカリティ 3▪解恨の種─無時効の発効
第1章 従軍慰安婦問題の国際性と無時効性──普遍的責務の履行と歴史和解の方途
纐纈厚
はじめに▪国際性と無時効性とは 1▪歴史認識の不在性と植民地支配責任 2▪植民地支配の歴史をなぜ忘れたのか 3▪植民地近代化論を超えるために おわりに▪歴史和解の方途と私たちの課題
第2章 「慰安婦」問題の超国家性と記憶の「グローカル」化
申琪榮
はじめに 1▪慰安婦問題はアジア共通の戦争被害 2▪慰安婦問題と一九九〇年代のグローバル女性人権規範 3▪慰安婦問題を解決するためのトランスナショナル市民連帯「アジア連帯会議」 4▪国際的な承認の拡大 5▪グローカル化する「慰安婦」問題記憶 終わりに▪グローバル#MeToo 時代に再考する慰安婦問題
第3章 日本軍「慰安婦」問題をめぐる「歴史戦」とグレンデール市の「平和の少女像」
李芝英
はじめに 1▪日本の右派の日本軍「慰安婦」問題をめぐる「歴史戦」 2▪グレンデール市の平和の少女像建立 3▪グレンデール市の平和の少女像撤去訴訟 まとめ
第Ⅱ部 日本軍「慰安婦」問題のローカリティ
第4章 固着の「歴史」、進行する「被害」──二つの国の日本軍「慰安婦」の歴史を扱う方法
韓惠仁
はじめに 1▪韓国政府─公共歴史での問題 2▪日本の公的事実の発見 3▪日本の公的事実の「意図的無視」 4▪隠蔽の技術:日本の公共談論の構造 5▪記憶から記録へ─女性が復元する記録 おわりに
第5章 日本軍慰安婦問題に関する政治的言説
李相薰
1▪何故、政治的言説なのか 2▪「河野談話」に関する政治的言説の展開 3▪日本軍慰安婦に関する政治的言説の含意 4▪日本軍慰安婦問題「解決」の展望
第6章 日本慰安婦問題に対する中国政府の立場 ──その歴史認識と最近の研究動向に絡めて
李哲源
はじめに 1▪慰安婦制度の根源についての歴史的な認識 2▪中国の公式立場の表明と転換の契機 3▪社会団体および学会の慰安婦問題に対する研究と立場 4▪結論および補完点
第7章 日本植民地下における台湾の慰安婦問題 ──その背景としての日本の公娼制度及性需要に関連して
楊孟哲
はじめに 1▪軍事国家日本の台頭 2▪台湾植民地化過程と性需要の増大 3▪台湾従軍慰安婦の現状と課題 おわりに
第8章 東南アジア島嶼部周縁地域における日本軍性奴隷制 ──東ティモールとインドネシア・南スラウェシ州の調査から
松野明久
はじめに 1▪東ティモールにおける軍性奴隷制の調査 2▪総督報告書が記した日本軍の要求 3▪慰安婦にされた女性たち 4▪軍が指揮して設置した「慰安所」 5▪協力か非協力か──引き裂かれたティモール人 6▪暴力と癒えぬ傷 7▪東ティモール社会と政府 8▪南スラウェシ州の事例がもつ意味 9▪セレベス民政部第二復員班の調書及び報告 10▪記載のない「慰安所」、秘密の「強姦場」 11▪軍産協力体制と性奴隷制 12▪「シリ(恥または名誉)」の概念と被害者のその後の人生 13▪インドネシア政府の対応 おわりに
あとがき 纐纈厚
【執筆者一覧】 序 章:朴容九(Park, Yong-Koo) *編者 1961年生。韓国外国語大教授。韓国日語日文学会副会長、東亜歴史文化学会副会長。主著に『グローバル時代の日本文化論』(宝庫社)、『日本人の生と宗教』(共著、J&C)、『地域学の現況と課題』(共著、韓国外大出版部)等多数。 第1章:纐纈厚(こうけつ・あつし)*編者 1951年生。明治大学特任教授。植民地文化学会代表・東亜歴史文化学会会長。主著に『近代日本政軍関係の研究』(岩波書店)、『文民統制』(同)、『日本政治史研究の諸相』(明治大学出版会)、『侵略戦争』(筑摩書房)、『日本海軍の終戦工作』(中央公論社)等多数。 第2章:申琪榮(Shin, Ki-Young) 1969年生。お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科及ジェンダー研究所教授。主著に『東アジア地域秩序理論』(共著、社会評論アカデミー)、『脱戦後日本の思想と感性』(共著、博文社)、『The Routledge Handbook of Japanese Politics』(共著、Routledge)等多数。 第3章:李芝英(Lee, Ji-Young) 1969年生。東国大学日本学研究所専門研究員。主著に『少子化時代の家族政策』(共著、)、『多文化主義とフェミニズム』(共著、ハンウルアカデミー)、『競争と協力の韓日関係』(共著、ノンヒヨン)、『ジェンダーと世界政治』(共著、社会評論)等多数。 第4章:韓惠仁(Han, Hye-In) 1967年生。成均館大学 東アジア歴史研究所 客員研究員。主著に『前後の誕生:日本そして朝鮮人という境界』(共著、グリンビ出版)、『韓日修交50年相互理解と協力のための歴史的再検討』(共著、景仁文化社)等多数。 第5章:李相薰(Lee, Sang-Hoon) 1961年生。韓国外国語大学教授。主著に『日本政治─過去と現在の対話』(共著、大阪大学出版会)、『日本の政治過程』(ボゴ社)、『地域学的韓日関係試論 日本を知ってからこそ韓日関係が見える』(J&C)、『日本型システム』(共著、一潮閣)等多数。 第6章:李哲源(Lee,Cheol-One) 1961年生。韓国交通大学教授。主著に『地域学の現況と課題』(共著、韓国外国語大学出版部)、主要論文に「新中国の成立時期(1949-1954)における外交政策に関する研究」(『中国研究』No.75、2018)、「中國共産主義傳播過程上的社會文化的認同」(『中国研究』No.78)等多数。 第7章:楊孟哲(Yang -Meng Che) 1958生。台北教育大学教授。主著に『台灣歷史影像』(藝術家出版)、『日治時代台灣美術教育』(前衛出版、同日本語版・同時代社)、『台灣日治時代美術教育研究』(南天出版)、『太陽旗下的美術課─臺灣日治時代美術教科書的歷程』(五南出版)等多数。 第8章:松野明久(まつの・あきひさ) 1953年生。大阪大学国際関係学部教授。主著に『グローバリズムと公共政策の責任』(共著、大阪大学出版会)、『アジアの市民社会とNGO』(共著、晃洋書房)、 『フード・セキュリティと紛争』(共著、大阪大学グローバルコラボレーションセンター)等多数。
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