〈貨幣と信用の原理を批判するこれまでの理論体系そのものを見直す論集〉
本書は、マルクス経済学原理論における貨幣批判をテーマとし、信用の原理との結びつきを多角度から分析するものである。貨幣と信用を研究対象としたのは、信用貨幣の生成原理に関する従来の原理論体系に疑問を抱いたからである。
従来の原理論研究では、一般に貨幣または資本の運動を補助する信用の量的側面については詳論されているが、価値関係の形成因子として働く信用の質的側面にはさほど光が当てられてこなかった。
その理由は、端的にいえば、現金売買を商品交換の正則とし、信用売買をその変則とみなす売買規定と、現物貨幣を本物の貨幣とし、信用貨幣をその代理物とみなす貨幣規定─いわば真なるものと偽なるものとの見分け─とによって体系化されていることにある。
これに対して本書では、たとい両方の間に量的相違があるとしても、相対的価値形態側の価値表現によって形づくられる両極商品同士の価値関係のレベルでは質的相違は存在しないということを根拠として、従来の観点を相対化しようとする。(本書より)
目 次
はしがき
序 文
第一章 信用売買の理論領域
第一節 利子生み資本論と信用制度論
第二節 貨幣貸付説と貨幣融通説
第三節 商業信用と利子
小括
第二章 商品交換の成立原理
第一節 所有主体と交換主体
第二節 反省規定としての私的所有
第三節 反省規定としての価値関係
第四節 商品交換における権利と義務
小括
第三章 貨幣生成の論理構造
第一節 第Ⅰ形態から第Ⅱ形態への移行の矛盾
第1項 移行の不在
第2項 価値表現の見直し
第二節 第Ⅱ形態から第Ⅲ形態への移行の難点
第1項 移行の限界
第2項 価値表現の行き詰まり
第三節 第Ⅱ形態から第Ⅲ形態への移行の見直し
第1項 一般性の与えられ方
第2項 移行の見直し
小括
第四章 貨幣の内なる二面
第一節 貨幣蓄蔵の二つの契機 161
第二節 富の外来性と富の過剰性
第三節 富としての貨幣と商品としての貨幣
小括
第五章 信用貨幣の生成原理
第一節 金属貨幣と信用貨幣
第二節 信用貨幣の萌芽形態
第三節 貨幣商品の分岐構造
第四節 貨幣商品と貨幣概念
第五節 銀行券の貨幣性
小括
あとがき
参考文献
海 大汎(ヘ・デボム) 1986 年 韓国・ソウル生まれ 2013 年 韓国外国語大学人文学部言語認知科学専攻卒業 2017 年 北海道大学大学院経済学院修士課程修了 2020 年 北海道大学大学院経済学院博士後期課程修了 博士(経済学) 現在 北海道大学大学院経済学研究院助教
2021年10月8日刊行予定
貨幣の原理・信用の原理 ─マルクス=宇野経済学的アプローチ
海 大汎/著
定価=本体2600円+税 ISBN978-4-7845-1882-1 四六判並製296頁
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