“我々が求めているのは二度と人間が人間を蹂躙することを許さない、人間の尊厳を不可侵とする新しい世界だ。”
本書は、「公道~尊厳と公正を求める~」と題した大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟の記録である。同時に、聯誼会に結集する被害受難当事者と遺族、在日華僑の支援者、弁護団、日本人支援者らが、日本国家が犯した中国の民衆に対する強制連行・強制労働という著しい人権侵害と人道に対する罪の実相を明らかにし、日本国家としての責任を求めるという共通の目的のために本件訴訟を闘い、訴訟前の膨大な調査や準備を行い、訴訟の過程において各々が、如何なる思いで本件訴訟を共働して進めてきたかに関する記録でもある。
目 次
「第一走者」としての自負と責任の歩み ── 刊行に寄せて
受難者と共に歩んだ三十年
一 「日本は過誤を過誤として、その罪を潔く贖罪すべきだ」
二 第二の花岡蜂起
三 「花岡和解」から国家賠償請求訴訟へ
四 政府関係機関の全面的な関与を認定
五 人間の尊厳の回復と反差別を基軸とした国際人道法の世紀へ
六 正義と道義は我々の側にある
七 公道を求める闘いは続く
第一章 訴訟への道のり
はじめに ~「両者」の出会い~
一 遺骨発掘・収集と送還運動
二 歴史の〝逆流〟と「冷戦
三 「冷戦構造」の深化と日本社会の右傾化潮流
四 新たな出会い=生存者の〝発見〟と「花岡蜂起」指導者・耿諄氏の来日
五 「聯誼会」結成、対「鹿島」交渉と提訴 ──「和解」の成立
六 「西松裁判」と「四・二七最高裁判決」
七 「和解」をめぐる確執
八 中国被害者たちが求めるもの ──「公道」
九 次世代が担う「聯誼会」と「聯誼会連合」の成立
十 「国家賠償請求訴訟」への道のり
十一 「花岡人」── 先人たちの遺志を継ぐ「聯誼会」次世代の決意
十二 裁判の経緯
十三 受難者にとって「裁判」は闘いの〝終着点〟ではない
十四 むすびにかえて
第二章 強制連行の現場(地理と歴史)
一 強制連行の現場:華北地方
二 河北省における強制連行の背景
三 河南省における強制連行の背景
四 山東省における強制連行の背景
第三章 強制連行の現場を訪ねて
一 八路軍と日本軍の京漢鉄道の攻防 ~ 李鉄垂
二 石門俘虜収容所
三 山東省における連行 潍坊市(潍県)~ 荘進功
四 泰安市 ~ 韓煥提
五 済南俘虜収容所(新華院)~ 張修正、段新立
六 青島俘虜収容所と青島港
七 原陽の張忠傑
八 大阪での強制労働の現場
第四章 訴訟の経過と判決
一 立ち上がった第二世代、第三世代
二 国際人権法及び国際人道法上の義務
三 国家による事実の隠蔽と虚偽の国会答弁
四 提訴前の準備
五 第一審の訴訟活動
六 第一審の判決
七 控訴審での訴訟活動 ~ 強制連行の実態の立証
八 控訴審の訴訟とその判決
九 最高裁決定(二〇二一年三月二四日)
第五章 サンフランシスコ講和条約の枠組論を批判する
一 大阪・花岡中国人強制連行・強制労働裁判の本質的課題は何か
二 西松建設最高裁判決の高い壁を如何に乗り越えるか
三 本件中国人強制連行・強制労働裁判おける原告ら及び被告国の法的主張の概要
四 サンフランシスコ講和条約の法的枠組を前提とする本件大阪地裁と大阪高裁の法的判断の概要
五 二十一世紀の国際人権・人道法の潮流から見た西松建設最高裁の判断枠組の誤り
第六章 国家賠償請求訴訟運動の回顧と展望
一 判決に対し強烈な抗議と不満を表明する
二 闘いを総括する
第七章 「大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟」座談会
あとがき
侵略戦争および植民地支配責任と脱冷戦、脱植民地主義に向けて何をなすべきか
■資 料
資料 一 「一九九〇年七月五日の花岡受難者聯宜会と鹿島建設株式会社の共同発表」
資料 二 「二〇〇〇年一一月二九日の和解」以後の闘い一覧
資料 三 「大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟」の経過
資料 四 華人労務者内地移入に関する件(昭和十七年十一月二十七日閣議決定)
資料 五 華人労務者内地移入の促進に関する件 (昭和十九年二月二十八日次官会議決定)
資料 六 日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約) (一九五一年九月八日、発効一九五二年四月二八日)(抄)
資料 七 日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(一九七二年九月二九日)
資料 八 条約法に関するウィーン条約 (一九六九年五月二三日、発効一九八〇年一月二七日)(抄)
資料 九 花岡受難者聯誼会の小泉純一郎首相への要望書(二〇〇五年)
資料 十 中国人強制連行受害労工聯誼会連合の日本国政府への要望書(二〇〇六年)
資料十一 西松建設事件最高裁二〇一七年四月二七日判決(抄)
資料十二 大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟 大阪地方裁判所二〇一九年一月二九日判決(抄)
資料十三 大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟 大阪高等裁判所二〇二〇年二月四日判決(抄)
資料十四 中国人強制連行訴訟関連一覧
主な参照資料・文献
編集後記
2022年5月16日刊
公道(コンタオ)~尊厳と公正を求める~ 大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟
大阪・花岡中国人強制連行国家賠償請求訴訟訴訟団/編
定価=本体2000円+税 ISBN978-4-7845-1376-5 四六判並製306頁
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