*著者より
コロナ禍が蔓延しだした頃から、私は武蔵国の自宅に籠ってたくさん論文を執筆した。近所に市立図書館があるのでそこを経由して、必要な和書洋書文献を国公立の図書館からどんどん借り受けた。その結果、2020年から23年にかけて5点ほど刊行することとなった。その大凡のテーマは「文明を支える原初性」である。人類は、衣食住や医職自由の獲得を目指して大地を駆け回り、大地を掘り返してきた。辛く苦しい環境ほど人類を賢く育てあげた。その成果は身体知となって文化的に遺伝して今日に至っている。私が研究上で座右の銘にしている「文明を支える原初性」は、人類のそのような歩みの通奏低音をなしている。
シリーズ第6作はしがきより
石塚正英
石塚正英 〔文明を支える原初性〕シリーズ
07
原初性漂うハビトゥスの水脈
時空中間域を示すメソバースの概念を新たに用いて原初の歴史と現代世界とをもつれさせる社会哲学論集。
06
原初性に基づく知の錬成 アインシュタイン・戦争・ドヤ街生活圏
半世紀におよぶ社会思想研究で文明批評的な拡散を見せながら貫かれる〔文明を支える原初生〕というライトモチーフ。
05
バロック的叛逆の社会思想 ニーチェ・フロイト・ブルクハルト批判
現代世界において先史文化、原初的文化は滅んでいない、過去と現在の応答や交互運動、その視座を研究に取り込む意義を伝える。文明的思想家への原初的批判を通して行われるリベラルアーツの破壊と再建をめざす。
04
歴史知のアネクドータ 武士神道・正倉院籍帳など
様々な地域と領域で〝価値転倒〟が起きている。最たるは、二度にわたる世界大戦の反省に立ちながらも再び対立へ逆戻りしている国際社会。本書は〝価値転倒〟をモティーフにした研究遍歴を通し、歴史が創った思想と現代をつなぐ思念の意義を伝える学問論。
03
歴史知の百学連環 文明を支える原初性
歴史知的な立場・視座は、その双方の価値や意義を、転倒という構えで以って連結させる。科学知・理論知の立場を転倒させると生活知・経験知の立場に至り、その両極を交互的に連結させる構え、パラダイムが「歴史知」なのである。
02
フレイザー金枝篇のオントロギー 文明を支える原初性
フレイザー『金枝篇』は、つとに文学・芸術・学術の諸分野で話題になってきた基本文献である。学術研究のために完結版の翻訳を神成利男から引き継いできた意義をオンライン解説講座で語り続けた記録。
01
歴史知のオントロギー 文明を支える原初性
先史・野生の諸問題を通して現在この地球上に生きて存在する意味を問う。この地球上に生きて存在していることの意味、自然環境と社会環境の只中に内在していることの意味、あるいは、人と自然が互いに存在を認め合う関係が指し示す意味、歴史知のオントロギーを問う。